「バターを使っているのに、なんでレストランみたいな味にならないんだろう」
こう感じたことはありませんか。
フランス料理のレシピを見ると、
必ずと言っていいほど「バター」が登場します。
でも実際に作ってみると、どこか物足りない。コクがない。それどころか、
バターが焦げて苦くなってしまった……
そんな経験をお持ちの方は、決して少なくないはずです。
私自身も、料理を学び始めた当初、まったく同じ壁にぶつかりました。
・バターを入れたのにソースが美味しくならない!
・なんかソースが粒々のダマっぽくなってる!
・ソースを味見しても,とりあえずまずい!
バターは「入れるだけ」では意味がない!使いこなすための「知識」が必要なんだ!ってことを学びました!
この記事では、フランス料理においてバターがなぜ重要なのか、そしてプロが実践する3つのバター技法——ブール・クラリフィエ、ブール・ノワゼット、モンテ・オ・ブール——を、家庭でも実践できる形でていねいに解説します。
バターが「ただの脂肪」ではない理由
まず最初に、バターの本質を理解しておきましょう。バターは乳脂肪(約80%)、水分(約16%)、そして乳固形分(約4%)という3つの成分から成り立っています。
※覚える必要はないですよ(笑)
しっかり聞き流して下さい!
この乳固形分——つまり乳タンパク質と乳糖——が、加熱によってさまざまな風味変化を起こします。これがフランス料理におけるバターの奥深さの正体です。
※つまり加熱すると美味しくなるってことです😋
日本のバターと、フランスの発酵バターではそもそも風味が大きく異なります。
フランスの発酵バターは乳酸菌で発酵させているため、独特のコクと酸味があります。私自身も最初にエシレのバターを口にしたとき、「これがバターなのか」と衝撃を受けました。
材料の質が料理の土台を決める——これはフランス料理の根本にある考え方です。
バター料理がうまくいかない3つの原因
原因1:バターを「入れるタイミング」を間違えている
最も多い失敗がこれです。多くの方は「フライパンを熱してバターを溶かしてから食材を入れる」という手順を踏みますが、バターを高温で熱し続けると乳固形分が焦げてしまいます。
フランス料理では「バターをいつ入れるか」が、仕上がりを大きく左右します。たとえば肉のソテーでは最初は油で焼き始め、仕上げの直前にバターを加えてアロゼ(バターをかけながら焼く)するのが基本です。バターは「風味の仕上げ剤」として使うのです。
原因2:バターの「状態」を使い分けていない
バターには、温度や処理方法によって全く異なる「状態」があります。冷たいバター、室温バター、溶かしバター、澄ましバター、焦がしバター……それぞれが異なる料理に使われ、同じ「バター」でも役割がまったく違います。
この使い分けを知らずに「とりあえずバターを溶かして入れる」という方法では、プロの味には近づけません。
原因3:火加減が高すぎて乳固形分が焦げる
バターの乳固形分は120〜130℃程度から焦げ始めます。サラダ油の発煙点(約230℃)と比べると、バターはとても繊細です。
「強火でサッと炒める」という感覚でバターを扱うと、あっという間に苦い焦げ臭が漂ってしまいます。バターを使う料理では、基本的に「中火以下」でコントロールすることが大切です。
バターは「強火で使う素材」ではなく、「穏やかな熱で引き立てる素材」なのです。
プロのバター技法3つ:今日から実践できる
① ブール・クラリフィエ(Beurre Clarifié)——澄ましバター
バターから乳固形分と水分を取り除いた、純粋な乳脂肪だけの「澄ましバター」です。乳固形分がないため、高温でも焦げにくく、180℃以上でも使えます。ポワレやソテーの調理油として使うのに最適です。
作り方
- バターを弱火でゆっくり溶かす(焦がさないこと)
- 表面に浮いてくる白い泡(乳タンパク質の泡)をスプーンで丁寧にすくい取る
- 底に沈んだ白い沈殿物(乳固形分)を残して、上澄みの黄色い液体だけをこし取る
- これが澄ましバター。密閉容器に入れれば冷蔵で2〜3週間保存できます
私自身も、フランスの厨房では魚料理のポワレに必ず澄ましバターを使っていました。皮がパリッと仕上がり、バターの風味だけがきれいに残ります。
② ブール・ノワゼット(Beurre Noisette)——焦がしバター
「ノワゼット」はフランス語でヘーゼルナッツのこと。バターを加熱して乳固形分を意図的に黄金色に焦がし、ヘーゼルナッツのような芳ばしい香りを作り出す技法です。魚のムニエルや野菜のソテー、パンケーキの仕上げなどに使います。
作り方のポイント
- 厚手のステンレス鍋(底が見える鍋)でバターを中火で溶かす
- 泡が立ち始めたら弱火に落とす
- 泡が消えて底が黄金色〜茶色になってきたら火を止める
- 余熱で色が進むため、少し早めに火を止めるのがコツ
- すぐに冷水を張ったボウルに鍋底をつけて加熱を止める
焦がしバターは「色で判断する」——これが鉄則です。 目を離したら一瞬で「ブール・ブリュレ(黒焦げバター)」になってしまいます。私も何度、真っ黒な煙を上げてしまったことか……。
③ モンテ・オ・ブール(Monter au Beurre)——バターでソースを仕上げる
フレンチのソースを仕上げる最も重要なテクニックです。冷たいバターを小さく切り、温かいソースに少しずつ加えながらかき混ぜ、乳化させることで滑らかで光沢のある美しいソースを作ります。
成功のための3つのポイント
- バターは必ず冷たいものを使う:室温のバターでは乳化が安定せず分離します
- ソースの温度は80〜85℃を維持:沸騰させると分離します。「グツグツ」ではなく「じわじわ」の状態をキープ
- バターを一度に入れすぎない:1cm角に切ったバターを1〜2個ずつ加え、溶けてからまた次を加える
私自身がフランスで衝撃を受けたのは、このモンテ・オ・ブールでした。同じソースでも、バターを乳化させるだけで、まるでビロードのような滑らかさとコクが生まれるのです。「これがフランス料理の味の秘密か」と思わず感嘆したことを今でも覚えています。
モンテ・オ・ブールは、ソースを「完成させる」ための最後の一手。これを覚えれば、家庭のソースがレストランの味になります。
バターの種類による味の違い:発酵バターを試してみて
日本のスーパーで売られている一般的なバターと、フランス産の発酵バターでは風味が大きく異なります。発酵バターは乳酸菌による発酵工程を経るため、独特の酸味とコクがあります。
フランスで最も有名な発酵バターのひとつが、ロワール地方産のエシレ(Échiré)です。AOPの認定を受けた本場のバターで、プロのパティシエやシェフが愛用しています。
家庭でフランス料理を作る際、特に仕上げのモンテ・オ・ブールや、バター風味を前面に出したいパンソテーなどには、ぜひ一度、発酵バターを使ってみてください。その違いに驚くはずです。
まずは「バターの質」を変えてみる——それだけで料理の味は確実に変わります。
今日から実践できる具体的なアクション
- ブール・ノワゼットを作ってみる:白身魚(タイやヒラメ)を焼いて、仕上げに焦がしバターとレモン汁をかけるだけ。「魚のムニエル」の基本です。難しくないのでぜひ挑戦してみてください。
- バターを入れるタイミングを変える:次に肉料理を作るとき、最初はサラダ油で焼き始め、仕上げの最後1〜2分だけバターを加えてアロゼする方法を試してみてください。バターの風味が格段に引き立ちます。
- 鍋の色を見ながら火加減を覚える:ステンレスや銅の色が見える鍋でバターを加熱する練習をすると、焦がしバターの色の変化がよくわかります。テフロンや黒い鍋だと色が見えにくいため、最初はステンレス鍋がおすすめです。
- 冷たいバターをいつでも用意しておく:モンテ・オ・ブールのために、バターを1cm角に切って冷凍保存しておくと便利です。すぐに使えて乳化しやすい状態をキープできます。
📌 この料理におすすめのアイテム
発酵バター(エシレ・無塩) — フランスAOP認定の本場の発酵バター。モンテ・オ・ブールや仕上げのバター使いで、その風味の違いを実感できます。
▶ エシレ 発酵バター(無塩)100g
ステンレス片手鍋(柳宗理・18cm) — ブール・ノワゼットやモンテ・オ・ブールに最適な、底の色が見やすいステンレス鍋。熱伝導が均一で、バターの状態を目視で確認しながら調理できます。
▶ 柳宗理 ステンレス・アルミ3層鋼 片手鍋 18cm
耐熱シリコンスパチュラ(Zwilling Pro) — モンテ・オ・ブールでバターを乳化させる際、鍋肌の隅々までかき混ぜられる柔軟なスパチュラ。230℃耐熱で変形しません。
▶ Zwilling Pro シリコンスパチュラ(耐熱230℃)
まとめ:バターを「使いこなす」ことがフレンチの扉を開く
今回解説した3つのバター技法を振り返ってみましょう。
- ブール・クラリフィエ:乳固形分を取り除いた澄ましバター。高温調理に使える万能バター
- ブール・ノワゼット:意図的に乳固形分を焦がした芳ばしいバター。魚料理の仕上げに
- モンテ・オ・ブール:冷たいバターをソースに乳化させて、シルクのような滑らかさを生む
これらは決して難しいテクニックではありません。「バターには状態がある」「温度によって働きが変わる」——この基本を理解するだけで、あなたの料理は確実に変わります。
私自身、フランスの厨房で学んだことのなかで、バターの扱い方は最も印象深いもののひとつです。「バターはフランス料理の魂だ」とシェフに言われた言葉が、今も脳裏に焼きついています。
料理は知識と実践の積み重ね。一度作ってみれば、頭の中だけの知識が、手の中の技術に変わっていきます。
今回ご紹介したブール・ノワゼットを使った「白身魚のムニエル」や、モンテ・オ・ブールのソース作りは、私のYouTubeチャンネルでも実際に調理する様子を動画でご覧いただけます。文章だけでは伝えきれない「色の変化」や「とろみのタイミング」を目で確認していただけますので、ぜひチャンネルもチェックしてみてください。
▶ YouTube「French Kitchen」チャンネルはこちら
次回も、フランス料理の基本をていねいに解説していきます。どうぞお楽しみに。

コメント