ジビエのメニューで「ペルドロー」や「ペルドリ」という言葉を見かけることがあります。どちらもヤマウズラのことですが、料理人にとっては、まったく別の食材です。
その前に、よく誤解されていることから。
まず、うずらとは別の鳥です
名前に「ウズラ」と入っていますが、ヤマウズラはウズラの仲間ではありません。
- ウズラ ── キジ科ウズラ属。約100〜120g。卵でおなじみの、あの小さい鳥
- ヤマウズラ ── キジ科ヤマウズラ属。約300〜500g
同じキジ科ではありますが属が違い、大きさも3〜4倍あります。
フランス語ではペルドリ(perdrix)、英語ではパートリッジ。日本語に訳すときに「ウズラ」という言葉が当てられただけで、別の鳥だと思ってください。
若鳥と成鳥で、呼び名が変わります
フランス語では、こう使い分けます。
- ペルドロー(perdreau)── その年に生まれた若鳥
- ペルドリ(perdrix)── 成鳥
違いは年齢だけですが、肉質がまるで違います。
ペルドロー(若鳥)は、肉が柔らかく、香りが繊細です。だからローストにします。シンプルに火を入れて、素材そのものを食べる。
一方のペルドリ(成鳥)は、よく動いた分だけ筋が張って固い。ローストすると噛み切れません。だから煮込みます。キャベツと一緒にじっくり煮る「ペルドリ・オ・シュー」が古典です。
メニューに「ペルドロー」と書いてあれば、それは「若鳥をローストで出します」という宣言でもあるわけです。
ルージュとグリ
ヤマウズラには、大きく2種類あります。
- ペルドリ・グリ(灰色)── フランス北部・シャンパーニュ地方。小ぶりで、繊細
- ペルドリ・ルージュ(赤足)── 南仏・スペイン。やや大きく、肉質がしっかり
フランスの美食家は、伝統的にグリを上位に置きます。香りが上品だからです。
ただしルージュにも利点があります。野性味が穏やかで、ジビエに慣れていない人でも食べやすい。そして1羽が大きいので、料理として組み立てやすい。
脂のない肉に、脂を巻く
ヤマウズラの胸肉には、脂がほとんどありません。飛ぶ鳥なので、余計な脂を持たないのです。
そのまま焼けば、当然パサつきます。
そこで古典的に行われるのが、バルド(barder)という技法です。背脂やベーコンを胸に巻いて、タコ糸で縛ってから焼く。
語源は「馬の鎧」を指す言葉と言われています。鎧を着せるように、肉を脂で包む。
焼いている間、脂が溶けながら肉を覆い続けるので、肉汁が逃げません。冷蔵庫も低温調理器もなかった時代に、脂のない肉をどうするかという問いに対する答えが、これでした。
この技法は、現代でも脂の少ない肉全般に使えます。豚ヒレ肉にベーコンを巻くのも、原理は同じです。
火入れが、最大の難所です
ペルドローの調理で難しいのは、火入れの一点に尽きます。
脂がないので、入れすぎると一瞬でパサつきます。豚ヒレの比ではありません。数十秒の差が出ます。
しかも厄介なことに、胸肉ともも肉でベストが違います。
- 胸肉 ── 中心がうっすらピンク(ロゼ)で止める
- もも肉 ── よく動く部位なので、しっかり火を通す
丸のままローストすると、どちらかが外れます。そのため店では、胸と足を外して別々に火を入れることが多い。1羽から2つの食感を出せるので、小さな鳥を一皿として成立させる方法でもあります。
そして焼いた時間と同じくらい休ませる。これを省くと、切った瞬間に肉汁が流れ出します。
骨を捨てない
ペルドローの香りは、肉よりも骨から出ます。
胸と足を外したあとの骨を、香味野菜と一緒に焼いて煮出す。それを煮詰めれば、ジュ・ド・ロティ(焼き汁のソース)になります。市販のフォンとは比べものになりません。
小さな鳥なので、1羽から取れる量はわずかです。でもその数十ccが、皿全体の香りを決めます。
付け合わせの古典
ヤマウズラに合わせるものは、おおむね決まっています。
- 栗 ── 最も相性がよく、クリスマスの定番でもある
- キャベツのブレゼ ── 成鳥を煮込む料理から来ている
- レンズ豆 ── 素朴な土の香りが合う
- セップ茸 ── 秋冬の王道
- ぶどう ── 甘みと酸で野性味を受ける
どれも派手ではありません。ジビエは素材の香りが強いので、付け合わせは静かなものを選びます。
12月、この料理を出します
12月のクリスマス営業で、ペルドロー・ルージュのロティをご用意します。美味しいソースを添えて。
脂のない肉に脂を巻く、バルドという古典技法。その本家です。
詳細は改めてご案内します。

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