5月!窓を開けると風が変わって、街路樹の緑がまぶしくなる季節です。
天気が良くてとっても過ごしやすい日が続いていますよね!
それなのに、台所に立つと、なんだかいつもと同じメニューばかり並んでいる。
冬から変わらない煮込み、変わらない炒め物、変わらない盛り付け。
家族からも「今日は何?」と聞かれて、答えるのがちょっと億劫になっている。
そんな初夏を、毎年なんとなく過ごしていませんか。
「料理がマンネリだ」と感じる本当の理由は、レパートリーの少なさではありません。
私自身、フランスで修業していた20代のころ、シェフから何度も言われた言葉があります。
「お前は皿に料理を盛っている。皿に“季節”を盛っていない」
最初は意味がわかりませんでした。
でも、5年近くフランスにいるあいだに、
フランスの料理人が“季節感”をどれだけ大事にしているかが、少しずつ体に入ってきました。
今日は、家庭の食卓でも今すぐ真似できる、
初夏の“季節感”の取り入れ方を3つお話しします。特別な食材も、難しい技術もいりません。
「マンネリ」の正体は、献立ではなく“五感”の鈍り
「献立がマンネリ」と聞くと、
多くの方が「レシピが少ないから」「料理のレパートリーが足りないから」と思いがちです。
だから新しいレシピ本を買う。Instagramを見る。Pinterestを開く。
でも、それで本当に料理が楽しくなりますかね?
マンネリの本質は、レシピの数ではなく、季節を感じる回路が鈍っていることにあります。
スーパーには一年中、同じ野菜が並んでいます。
トマトもキュウリも、12月でも5月でも、見た目は変わりません。
(食べてみると美味しいものもあれば、がっかりするものもありますが💦)
便利になった分、私たちは「今しか食べられないもの」を選ぶ感覚を、少しずつ失っています。
フランスの市場(マルシェ)に立つと、これが本当によくわかります。
3月にはアスパラガス、5月にはサクランボとそら豆、6月にはイチゴと白いんげん。
売り場が“今”そのものなのです。
季節を感じない食材で、季節を感じない盛り付けで、季節を感じない器に料理を盛ったら、
当然、食卓は毎日同じに見えます。マンネリは、料理の腕の問題ではなくて、感じる側の問題なのです。
季節感が消える3つの原因
ここを少し具体的に整理しておきます。家庭料理から季節感が消えていくとき、たいてい3つの原因がそろっています。
原因①:「便利な食材」で買い物を完結させている
トマト、キュウリ、ピーマン、にんじん。買い物カゴに入れる食材が、毎週ほぼ同じになっていませんか。
これらは便利で安価で、一年中手に入ります。
でも、一年中あるということは、季節を切り取る力が弱いということでもあります。
便利なのはわかるんですが、
ワクワクしないんですよね!
5月のアスパラガス、絹さや、新じゃが、新玉ねぎ、
そら豆、初鰹。今だけの食材を一品だけでも食卓に入れるかどうかで、皿の表情はまったく変わります。
原因②:盛り付けが「同じ皿・同じ角度」で固まっている
家庭の食器棚をのぞくと、ほとんどの方が同じ皿を毎日使っています
。白い大皿、丸い深皿、ワンパターンの定食用プレート。
悪いことではありません。でも、皿が固定化すると、料理の見え方も固定化します。
フランスで働いていたとき、シェフは「同じ料理を3日続けても、
皿を変えれば違う料理になる」と言っていました!実際、ガラスの器に変えただけで、料理が涼しげに見える瞬間があります。
原因③:「香り」がほとんど添えられていない
3つめが一番大きいかもしれません。家庭料理の多くは、「味」は丁寧でも、「香り」が薄いことが多いのです。
ハーブ、柑橘、スパイス、ナッツの焙煎香——こうした“香りの要素”が皿に乗っていないと、料理は記憶に残りません。
人が「美味しかった」と覚えているのは、味そのものよりも、口に運ぶ瞬間に立ちのぼった香りであることが多い。
私自身、フランスのビストロで一番衝撃を受けたのは、
料理を出す直前に、シェフが必ず生のハーブを一掴み、
皿に散らしていたことでした。料理の格が、それで一段上がっていました。
解決:今日からできる“季節感”の3つの取り入れ方
ここからが本題です。難しいテクニックはいりません。3つだけ意識を変えてみてください。
① 「色」で季節を入れる
初夏の色は、グリーン・レモンイエロー・淡いピンクです。
食材を選ぶときに、味だけでなく「色」で1品選んでみてください。
- グリーン: アスパラガス、絹さや、そら豆、ハーブ
- イエロー: 新玉ねぎ、レモン、卵黄
- ピンク: 初鰹のたたき、ラディッシュ、ハム
普段の献立に、初夏の色を「1品だけ」入れる。これだけで、食卓に季節の風が入ります。
② 「香り」で季節を入れる
香りは、季節感を演出する一番手っ取り早い方法です。
おすすめは、生のハーブ。ディル、バジル、ミント、イタリアンパセリ。スーパーで100〜200円で手に入ります。
普段の鶏むね肉を、塩・こしょう・オリーブオイルで焼くだけでも、最後にディルとレモンを散らした瞬間に、まったく別の料理になります。「家庭料理がビストロの一皿になる瞬間」が、ここにあります。
ハーブが続かないなら、レモンの皮の擦りおろしだけでも十分です。
私が長年愛用しているのは、フランスの厨房でも定番のマイクロプレーン プレミアム ゼスターです。レモンの皮もパルメザンチーズも、料理の仕上げにふわっと一掴み散らせる。一本あるだけで、家庭料理の香りの精度が一段上がります。
③ 「皿」で季節を入れる
最後に、皿を1枚だけ変えてみてください。
初夏のおすすめは、ガラスの器か、木のボード。
- ガラスの小鉢に冷たい一品を盛る → 涼しさが立ち上がる
- 木のボードにパンとハム、ピクルスを並べる → ビストロの空気感が一瞬で出る
もし1点だけ買い足すなら、私のおすすめは、取っ手付きのアカシア材ボード(SPICE OF LIFE BONO BONO 51×24cmのような大ぶりサイズ)と、ボダムのダブルウォールグラス(BODUM PAVINA 250ml 2個セット
)の2点です。ボードにパンとハム、グラスに冷たいスープやヴェリーヌ。これだけで食卓が一気にビストロの空気になります。
新しい食器を買い揃える必要はありません。家にあるガラスのコップを冷製スープ用に使う、木のまな板を皿として使う、それだけで十分です。
「季節は、食材だけでなく、器と香りからもやってくる」——これは、私が今もキッチンで一番大切にしている言葉です。
今日からの具体アクション
明日のスーパーで、3つだけ買い物カゴに入れてみてください。
- 生のハーブを1パック(ディルかバジル、迷ったらディル)
- 季節の野菜を1つ(アスパラガス、絹さや、新玉ねぎ、どれでも)
- レモンを1個
そして帰ったら、家にあるガラスの器を1つ、食器棚の手前に出してください。
その日の夕食は、いつもの料理にハーブを散らすだけ・レモンを絞るだけ・ガラスの器に盛るだけ。これでもう、季節感の入った食卓になります。
「献立を変えなきゃ」と気負わないでください。変えるのは、献立ではなく、季節を取り入れる“装置”を1つ増やすことです。
まとめ:料理は、皿の上に季節を再現する仕事
マンネリは、料理の腕の問題ではありません。一年中変わらない食材、変わらない皿、香りのない仕上げ——これが少しずつ食卓から季節を消していきます。
逆に言えば、色・香り・皿のどれか1つを変えるだけで、料理は今日から変わります。
私はフランスで料理を学んでから、ずっと「季節を皿に乗せる」ことを続けてきました。
週一でやっているビストロでも、これだけは絶対に外しません。
そのビストロもいったん5月でおしまい!

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