25歳のとき、私はフランスへ渡りました。
料理の世界に入ってまだ数年。「本場を見たい」というよりも、「このまま日本にいたら、自分はどこにも行けない気がする、でも料理は続けていたい」という焦りの方が強かったように思います。
フランスで最初に驚いたこと
渡仏して最初に衝撃を受けたのは、料理の技術よりも「食に対する考え方」でした。
私が最初に住んだ街はブロワ(BLOIS)という田舎町。
パリから電車で2時間かかるフランスの中央部、ロワール地方にある街です。
知人の紹介でその街にブラッスリー(ビストロよりも安めの食堂みたいなもの)をオープンするということで、オープニングスタッフとしてそのお店で働くことになりました。
住む場所もないため、
お知り合いのフランス人の旦那さん・韓国人のご婦人のお家でホームステイのような形で住ませてもらうことに。
住む条件が「その家の料理担当になること」、
そして空いた時間にフランス語をレッスンしてくれるという、
なんとまぁ幸運すぎる待遇!!
まだお店も完成していない段階だったので、昼間はマルシェに行ったり、
ご婦人からフランス語のレッスンを毎日してもらえました!
市場に行けば、日本のスーパーでは見ることができないような新鮮な野菜、肉、魚などが並んでいます。
そして夜はご夫婦のご友人を招待してのディナー。
もちろん内容は当時の日本のフランス料理とは全く違う、
日常の料理です。食卓を囲む時間が、会話の中心にある。
日本にいたときの私は「いかにうまく作るか、どんな料理が本場に近いのか」ばかりを考えていました。
でもフランスでは、料理はすでに生活の一部として、
もっと自然な場所にありました。その違いが、最初はうまく言葉にできませんでした。
厨房で学んだこと、市場で学んだこと
フランスでの5年間、厨房に立ちながら多くのことを吸収しました。
火加減のこと、ソースのこと、素材の扱い方。でも振り返ると、一番大切なことは厨房の外で学んだ気がします。
朝の市場で旬の素材を手に取りながら、
その日のご夫婦に作る献立を考える。
近所のビストロで常連客とシェフが笑い合いながら食事をする光景。
料理は「作るもの」である前に、「人と人をつなぐもの」なのだと、少しずつ理解していきました。
帰国して、気づいたこと
30歳で日本に戻りました。フランスでの経験を胸に、また厨房に立つ日々。
あるホテルで副料理長として働きましたが…。
副料理長という立場になると、ほぼ料理はしなかったんですよね。
キッチンの構造上、オーダーを読み上げて、若い料理人の子たちに料理を作ってもらう立場です。
でも帰国してしばらく経って、ひとつのことが気になり始めました。
「フレンチ」と聞いたとき、多くの人が「難しい」「高い」「特別な日に行くもの」と感じてる。
自分の生活のいつもそばにあったフランスの食文化、
普通のフランス人が毎日作っている日常の料理。私がフランスで5年間見てきた、
あの日常的で温かくて豊かな食卓とは、ずいぶん遠いイメージなんですよね!
フランス料理は、本来もっと身近なもの。家にある材料で、普段の食卓が豊かになる!
私がやるべきことは、「もっとフランス料理を誰もが楽しめるように広めることじゃない?」
そう思い始めたのが、このチャンネルとブログを始めたきっかけです。
40歳になった今、思うこと
あれから10年が経ち、私は今40歳になりました。
フランスへの思いは、今も変わっていません。
むしろ歳を重ねるほどに、あの市場の空気や、ビストロの温度が、鮮明に思い出されます。
毎週通っていたマルシェに飛んでいきたい気持ちです(笑)
今は日本でフレンチ料理を発信しながら、
いつかまたフランスと日本を行き来するような生き方ができたらと考えています。
料理を通じて、二つの国をつなぐこと。それが、今の私の目標です。
このブログとチャンネルについて
このブログ「nao-chef-blog.com」とYouTubeチャンネル「French Kitchen’s」では、フランス料理のレシピや調理技術を、できるだけ丁寧に、できるだけ身近に伝えることを大切にしています。
難しい技法も、フランスでは家庭料理のひとつです。その感覚を、一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。
これからも、どうぞよろしくお願いします。

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