『少しずつ、でも確かに』料理人が伝えたい、食との向き合い方
料理の世界に入って、気がつけば20年以上が経ちました。
プロとして何百、何千という料理を作ってきた中で、私がいまでも一番大切だと思っていることがあります。
それは、「技術」ではなく、まず「心」です。
美味しい料理は、「人を想う心」から生まれる
たしかに、プロであればある程度の料理は、練習さえすれば誰でも作れるようになります。
実際、レシピ通りに手順を踏めば、見た目の良い料理を仕上げることもできます。
しかし、私はどんな料理であっても、何度も作り直して味のバランスを整え、盛り付けを磨き、提供スピードまで意識しないと納得がいきません。
つまり、即興で作った料理をそのまま人に出すというのは、私にはできないのです。
なぜなら、料理とは人と向き合う行為であり、その人に喜んでもらいたいという「想い」が必要不可欠だと考えているからです。
ご家庭で料理をする方へお伝えしたいこと
もしあなたが、家庭で料理を楽しんでいる方なら、私からお伝えしたいことがあります。
それは、料理の上手さを決めるのは技術ではなく、次の2つの“心”があるかどうかです。
- 人を想う心
- さらに良くしようという心
この2つの心を持つことで、あなたの食卓には確実に笑顔が増えていくはずです。
失敗も、やさしさの一歩になる
たとえば、肉じゃがを作ったときに、ジャガイモが固かったり、味が薄かったりしたとします。
家族の反応が微妙で、がっかりすることもあるかもしれません。
しかし、そんなときこそ大切なのは「なぜうまくいかなかったのか」を考えることです。
- 煮る時間が短すぎたのでは?
- 煮汁の味が薄かったのでは?
- 味を含ませる時間が足りなかったのでは?
たった一瞬でもいいのです。原因を考えるという行為そのものが、人を想うやさしい心だと私は思います。
そしてこの“考える力”こそが、自然と料理の腕を磨くことにつながっていくのです。
たとえばこのような「火加減や味を含ませやすい道具」があるだけで、失敗が成功に近づくこともあります。
道具選びもまた、「より良くしよう」とする心の表れなのです。
心があるから、味も育つ
つまり、料理が上手になるというのは、「感謝されるために頑張ること」ではなく、
「もっと喜ばせたい」という気持ちの積み重ねだと私は思います。
その積み重ねがやがて技術となり、自信につながり、
最後には「美味しかった!」の言葉として返ってくるのです。
最後に
私は現在、週にたった3時間しか開かない小さなビストロを運営しています。
しかしその中でも、毎週訪れてくれるお客様がいて、
「また来たい」「また食べたい」と言ってくださる方が増えてきました。
それは、決して華やかな料理を出しているからではありません。
「人を想う心」を一皿に込めているからだと思っています。
▼私のビストロのことや、料理人としての歩みについてはこちらでも紹介しています。
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